社団法人東京都中小建設業協会

会 長 吉 田 建 三

新春を迎え、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
新玉の年の初めには、皆それぞれに一年の夢や希望を胸に抱くところでございましようが、皆様既にご承知のように、中小建設業はあまりにも厳しい現実に直面しており、心の霧の拭えない年明けでありました。

デフレ経済は、国家財政や地方財政を益々窮地に追い込み、まさに破綻寸前であります。こういう状況ですから、公共事業費は益々削減され、来年度予算では、国で3パーセント、東京都では10パーセントの更なる減額が予想されております。

公共投資の大幅減により、建設業は完全に供給過剰産業となり、少ない発注量を巡って、業者同士が採算無視の激しい受注競争を繰り返しているのが現状です。このようなことがいつまで続けられるものでしようか。

都中建はこの状況を中小建設業最大の危機と捉え、「適正価格による秩序ある競争」を強く訴えたところであります。その後も機会あるごとに中小向け事業量の 確保と入札制度の再検討を強く当局に要望してまいりましたが、成果はなかなか見えてまいりません。

産業再生の立場から、新分野への進出を図る様々な努力も重ねております。全国的には一部で成功例も報告されていますが,東京では目に付くものがありませ ん。長年この業界の中で育った人間を他に転用することの難しさは想像以上のものがあります。

又、勇気ある撤退も有力な選択肢であると勧めてもいます。しかし、中小建設業の経営者には個人保証という問題があります。会社に借金がある場合、個人が弁済しない限り、会社を閉じることもできないのです。

「市場に任せる」とよく云われます。しかし、中小建設業という弱者を市場に任せたらどうなりましようか。惨憺たる業界の末路が見えてくるだけです。

確かに日本経済にとって「改革」は必要なことなのでしよう。しかし、改革の陰に泣く多くの人々のことも考えるのが政治の役目ではないでしようか。建設投資 を将来とも増やすことができないとすれば、今ここで建設産業の大転換を図らなければならないことはよく理解できます。政府は平成14年12月、「建設業の 再生に向けた基本方針」を示されました。そこには①市場が縮小しても収益が上がる企業、②経営基盤強化のための企業間連携が柱とされています。そして、具 体的な内容が盛られており、それぞれ結構とは思いますが、対象として、当面は大手、準大手ゼネコンとされております。中小建設業は後回しということです。 残念なことです。

本年は何としても中小建設業向けの再生施策を具体的に打ち出して頂きたいと考えます。

同時に、この難局は我々自身の力で乗り切っていかなくてはなりません。人は頼れないのです。技術と経営に優れ、不況に勝ち残れる会社を築くのは経営者の責務です。

都中建は、本年を「中小建設業再生の年」と位置付け、役員一同これに全力を傾注する覚悟です。今年も頑張りましよう。