市場の競争に晒し、強者は勝ち、敗者が去る、それが資本主義原理であり、最も合理的な行動であるという風潮が最近特に強まっている。我々は、この考え方に 基本的には反対である。日本人の心にある思いやりや和の精神を否定している。これでは社会にいい影響は得られない。建設業界も大、中、小、それぞれの分野 を守り、譲るべき時は譲り、互助の精神で進まなければ、相互に不信感だけが残り、殺伐とした社会だけが残ることになる。
かっては低生産性の故に中小企業は保護育成すべきものとされていた。ところが、何時までも弱者では世界に通用しない。「中小企業よ元気を出せ」という考え 方で中小企業基本法が改正されて以来、当然ながら中小企業に対する風当りは強くなった。そのきわめつけが今日の建設不況である。厳しい環境の中で我々は自 力で進まなければならないのである。国や東京都に向けた要望は前に述べた。更に政治にもお願いした。ここで、東京都内の中小建設業再生に役立つと考えられ る手法をいくつか提案する。
(1)新分野進出 | |
建設分野が縮小し、今後も回復の見込みがないとすれば、これしかない。国交省も予算をつけ、事例を示している。都内でも次第に各社で始まってきた。具体的には、建設周辺分野、介護分野、リフォームである。 | |
(2)官から民へ | |
協会加盟業者の実態を見ると、今までは官庁依存が強かった。官に需要がないとすれば積極的に民間需要を発掘すべきだ。ここにも激しい競争があるだろうが、隙間を狙っての進出を図る会社も出てきた。 | |
(3)技術力の向上 | |
技術は日進月歩である。しかも、これから生き延びられるのは「技術と経営に優れた」企業と云われている。中小建設業が緊急に技術力を高めるには、人的、資金的に難しい。共同研究、共同開発又は他社の手がけない独自技術の取得が望まれる。 | |
(4)情報化への対応 | |
IT化は避けて通れない。紙ベースの既存業務は抜本的に見直しを求められる。自らが適切な知識と判断能力を身につけなければこれからの建設業は成立たないことを認識し、果敢な挑戦が必要である。 | |
(5)建設業のための金融制度 | |
中小建設業が次々と倒産している。しかも地場の有力と云われる会社が倒産する。原因は色々あるだろうが、金融機関の協力を得られなかったという声 が多い。一時的に融資が受けられれば倒産はなかったというのである。繋ぎ融資の制度を設けることができれば、悲惨な結果はかなり防止できる。下請セーフ ティネット融資も有効であるが、緊急な際に「駆込寺」的な金融機関を業界で設立することも考えるべきである。 |