本日、ここに第32回通常総会を開催するに当り、一言ご挨拶を申し上げます。

ご来賓の各位にはご多用中にもかかわらずご臨席を賜り、誠に有難うございまいす。特に都議会の諸先生方には参議院議員選挙を目前にし、政務ご多端の折にもかかわらずご臨席賜りましたことに心から感謝申し上げます。

また、会員各位におかれましても、社業ご繁忙の中多数ご出席を頂き有難うございました。

さて、わが国経済は長期不況から脱し、ようやく回復基調へ流れが変わったのではないかと言われております。3月期企業の決算で見ましても、業種によっては、かなり収益の向上している会社も見受けられます。

しかしながら、建設業には全くその気配はなく、むしろ事態は一層深刻化しております。90年代の後半から建設投資額は減少を続けており、今やピーク時の60%程度であります。地方自治体の公共投資にいたっては更に落ち込んでおり回復の見込みは有りません。

21世紀の建設産業は完全な供給過剰産業となりました。大手がバタバタと倒産する事態を受けて、国交省は平成14年、「建設業の再生に向けた基本方針」を 決定し、建設産業の再編を図ってまいりました。諸施策の誘導と企業努力の結果、ようやく大手ゼネコンは一段落したと言われております。

これからは中小・中堅建設業の再編ということになりますが、中小に対する基本姿勢は市場原理による淘汰であります。マクロ的に見て、全国に50万社の中小 建設業は必要でないという方針が見えてきますが、中小建設業こそ地域に貢献し、地域と共に生きている存在です。「一律何割程度残ればよし」というような政 策はとって欲しくありません。これまでも多くの仲間、それも老舗と言われるような地域の中堅・中小企業が倒産、廃業に追い込まれ、時には悲しい話さえ聞こ えてきました。この傾向は今後益々強まってくると思われます。

都中建はこのような状況を受け、一昨年来、協会内に構造改善委員会を設け、中小建設業の再編の道を探ってまいりました。そして、本年2月17日ようやく結 論を得て、「中小建設業再生のために」として公表いたしました。基本的には、自助努力といたしました。中小建設業と言えども企業であります。経営者は与え られた条件の中で絶えずチャレンジし続け、企業と従業員を守る責任を持っていると考えたからです。

しかしながら、この厳しい産業構造の転換が自助努力のみで成就するとはとても考えられません。政治や行政の強力なお力添えがなければ事は成らないでしよう。

先般、私共の考え方と提案を都議会と東京都に対し、要望として提出いたしました.。ご一覧賜り政策討議のテーブルに乗せて頂ければ幸いに存じます。

東京都は昨年度の試行を踏まえて、本年度からいよいよ電子入札の本格実施に踏み切ります。入札自体は紙を機器に代えるだけですから、それ程問題はないと思われますが、多少は不安な面も有ろうかと考えまして、I・T特別委員会による講習会等の実施も計画しております。

中小建設業に新しい金融の道を開く目的で数年前に創設されたセーフティネット融資事業につきましては、その要件であります公共工事代金の債権譲渡が認めら れなかったため、東京都では実施できませんでした。諸先生方のご支援を頂き、都中建・都中建協として強くお願いをしておりましたが、この程ようやく事務レ ベルでの結論を出されたようであります。これから議会方面に説明の上発表する段取りと聞いております。本制度が動き出したならば積極的に利用し、企業の活 性化に役立てて頂きたいと思います。

中小建設業はかって経験したことのない経営の危機に直面しており、この事態を乗り切るためには、再編、再生しかないことは機会あるごとに申し上げてまいりました。そのためには新しい感覚と新しい力が求められます。

私は六年前都中建の会長に就任する時、都中建を若い人達に引き継ぐのが使命だと申し上げ、そのために努力をしてまいりました。若手の経営者は今や全国的に 活躍の場を拡げるまでに成長し、力もつけてまいりました。この際、新しいリーダーに後事を託し、私は今期限りで、都中建会長の職を辞任いたします。長い間 のご支援本当に有難うございました。

一本一本の矢は弱くとも何百本、何千本と纏まれば大変な力となるでしよう。都中建はそのために存在します。会員の一社一社が気持を合わせ、都中建に結集して、中小建設産業の再生を成し遂げて頂きたいと切望いたします。

都中建の益々の発展と会員各位のご繁栄を心から祈念し、私の挨拶といたします。